【2015年1月19日】京都ジビエ会議「日本のジビエの現状と未来」

ここ数年、非常に注目を集めているジビエ。

ジビエとは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味し、日本における代表的な種は「シカ」(もみじ)「イノシシ」(ぼたん)などがあげられます。昔から、日本の地方では、これらを食べる習慣がありましたが、「いかに美味しく命をいただくか…」という発想になって来たのはつい最近のように思います。

一方でこのジビエは社会問題ともなっており野生鳥獣による農作物被害額は、平成21年度以降は200億円を上回り、そのうち全体の7割がシカ、イノシシ、サルによるものです。また、森林被害面積は、近年約5~7千haで推移。主に鹿による幼木の食害は大きく、被害額は213億円に上ります。

1月19日「京都ジビエ会議」、前半の「エゾ鹿肉の解体&見学会」に続き、各界のスペシャリストによる「消費者の立場から」「生産者の立場から」「食肉流通の立場から」みたジビエのお話をいただきました。

まずは、「⽇本のジビエの現状」と題し、タベアルキストのマッキー牧元⽒による講演からスタート。
古代から現代までの日本の食肉文化がどのように変化してきたのか?西洋と日本のジビエや食肉文化の違いなどをわかりやすく事例も交えて講演いただきました。

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マッキー牧元氏 講演の様子(ダイジェスト)はこちらをご覧ください。

●マッキー牧元⽒紹介====================

タベアルキスト。㈱味の⼿帖取締役編集顧問 昭和30年東京⽣まれ。⽴教⼤学卒。⽴ち⾷いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから 居酒屋まで、⽇々飲み⾷べ歩く。まさに、「⾷べるグルメマップ」。 仕事のかたわら、⾷を⾒据える達⼈。 多くのアーティストの宣伝・制作の仕事のかたわら、1994 年には、昭⽂社刊「⼭本益博の東京⾷べる地図」取 材執筆、1995 年には「味の⼿帖」に連載を開始するなど、⾷に関する様々な執筆活動を⾏う。 現在も、「味の⼿帖」、「⾷楽」、「銀座百店」、「東京カレンダー」など、多数の雑誌やWeb に連載中。 近著に「東京最⾼のレストラン2015」「間違いだらけの鍋奉⾏」「ポテサラ酒場」など。

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続いては「ジビエ専⾨集団ELEZO 社の挑戦」と題し、ジビエの流通に携わる ELEZO 社の佐々⽊章太⽒による講演。
佐々木氏は自らも狩猟を行う他、生産から飲食店まで関わっておられ、今回の講演では、ジビエに携わるまでの経緯や、こだわりの他、「命」をいただくとは?という想いまでをお話いただきました。
前半の「解体&見学会」でもお話されていましたが、狩猟した獲物にも命があり、「血の一滴」も無駄にせずに活用してあげることを突き詰めていった結果が、シャルキュトリーや飲食店まで自らが関わる結果になったという話が印象的でした。

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◆佐々⽊章太⽒ 紹介=================================

北海道十勝出身、飲食業を営む家に生まれ高校を卒業後、調理師学校で学びその後、 軽井沢・東京などのフランス料理店で修行した後帰郷、ジビエの魅力に開花。生産・屠畜・狩猟・解体・熟成・加工・流通・飲食店までを事業体として関わり、また 自らも狩猟免許を取得し、料理人 兼 食肉処理人 兼 狩猟家として活動中。

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第三弾目の講演は、生産者の立場から駒⾕信幸⽒より「⾷の未来〜若い世代に継いでいくもの」と題してお話をいただきました。
生産者からの立場から地域を活性化するためのグリーンツーリズムを始めとした様々な取り組みや、現在力を入れている農家民泊についての話を中心に、これからの農業とは、農業や畜産を支えて行く為にはどうすれば良いのか?を楽しく講演いただきました。
特に農家民泊でのエピソードのお話の中で、田舎暮らしや、アウトドアを経験したことがない若者が増えており、食生活にも課題が多いというくだりでは、参加者の皆さんは笑いつつも、食育や子育てについて考えされられたようでした。

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駒谷信幸氏 講演の様子(ダイジェスト)はこちらをご覧ください。

◆駒⾕信幸⽒ 紹介=======================

農事組合法⼈駒⾕農場代表理事会⻑。
北海道の⻑沼町及び様似町で「駒⾕農場」を経営。 消費者ニーズに応えた⽣産から販売まで⼀貫した経営を実践している。 ⻑沼町農協組合⻑在任時からグリーンツーリズムへの取組を推進し、それまでの⽶国型の⼤規模農業から、 景観の美しさや⽣活様式を含めて売りにする欧州型に転換した。 現在に⾄るまでは、畑作のみならず、⾁⽜の経営も実施。現在、様似の⾁⽜牧場は⻑⼥の⻄川奈緒⼦⽒が 「完全放牧野⽣⽜〜ジビーフ」の⽣産として事業継承。 六次産業化という⾔葉がまだない頃から、農産物の直売所、レストラン、農家⺠泊の実施、グリーンツーリズム などに取り組み、⾷育基本法の制定にも尽⼒された。また、⿅のハンティングも⻑年続けており、加⼯場までも 所有する。 ⽇本農林漁業振興協議会理事⻑。第25 回⽇本農業⼤賞受賞。第35 回天皇杯受賞。
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最後には、新保吉伸⽒より「⽇本とフランス⾷⾁産業の未来」と題して、フランスからお招きしたイブ=マリ氏とともにお話をいただきました。

新保氏は、これからの食を支えるお肉の職人、また畜産や農業を志す若者、また料理を通じて消費者とつながる飲食業を目指す若者を、育てていく仕組みづくりが重要だということを、今までの安全・安心・美味しいお肉を提供する活動の中で感じておられ、その想いをフランスの肉職人であるイブ=マリ氏が行われている職人教育プログラムや考え方に共感したことから、今後は連携しながらも人を育てるような活動も行っていきたいと言われていました。

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新保吉伸氏 講演の様子(ダイジェスト)はこちらをご覧ください。

イブ=マリ氏 講演の様子(ダイジェスト)はこちらをご覧ください。

新保吉伸⽒ 紹介============================================

1980 年に畜産業界に⼊る。1989 年に「さかえや精⾁店」開店。 ⽣産農家との取り組みや⽜⾁の新たな流通を構築した仕組みを評価され、2001 年に関⻄IT 活⽤企業百 撰において優秀賞を受賞。その後は⽜⾁の安全性を訴え、消費者が安⼼して購⼊できるよう、システム、実践 活動にも⼒を⼊れる。 2006 年には経済産業省推進事業IT 経営百選において最優秀企業に認定され、ネット通販や⾷に関するセ ミナー講師を多く務める。⽣産者と料理⼈をつなぐ活動を積極的に⾏い、近江⽜だけではなく、全国の⽣産者 とつながり様々な⽜を⾒て歩き、⾃分の⼿で捌き精⾁にするまでを使命だと考えています。 国産飼料100%で育てる「近江プレミアム⽜」や愛農学園⾼等学校の養豚部が育てる豚を「愛農ナチュラルポ ーク」としてブランド化、北海道様似新富地区の駒⾕牧場で育つ完全放牧⽜をジビーフと名付けて流通の基 盤を作るなど精⼒的に活動している。座右の銘は「死ぬ直前まで⾁屋でありたい」 フードアクション・ニッポン・アワード2010 プロダクト部⾨優秀賞受賞 フードアクション・ニッポン・アワード2014 審査委員特別賞受賞

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◆イヴ=マリ氏 紹介=========================

精⾁店経営(フランス国内3 店舗)、ステーキハウス経営、カッティング技術講座-主宰。 ⾷⾁熟成のスペシャリストとして、通常の倍である60 ⽇間熟成した⽜リブロースを看板商品としている。 また⽣産者より直接⾁を買いつけることのパイオニアでもある。 ル=ブルドネックの信条は、⾁職⼈の技術の伝承とともにそのイメージの近代化を企り、 ⽣産者にその労⼒と時間に⾒合った賃⾦を払うべきだとしている。 1968 年フランスモントルイユ⽣まれ。 1986 年18 歳でパリの郊外アニエール・シュール・セーヌで精⾁店「ル・クトー・ダルジャン」を開店。 2003 年「レクスプレス」誌主催の⽬隠しコンテストで、パリの精⾁店125 店中、最優秀店に選ばれる。 2008 年ル=ブルドネックの⾁は「ニューヨーク・タイムズ」により≪世界で⼀番美味しいハンバーガー≫に選ばれる。 2010 年フランステレビ局「カナルプリュス」で⾁関連産業の90 分のドキュメンタリー番組のプレゼンターを務める。 2012 年パリ16 区ヴィクトール・ユゴー通りに歴史ある精⾁店「ラ・マルティーヌ」のオーナーとなり、⾼級⾁を 販売。翌年、⾃⾝で「アイ・ラブ・ビドーシュ」(⾁が⼤好き)という運動を⽴ち上げる。 また「L’effet boeuf(⽜⾁の真髄)」(ミシェル・ラフォン刊)を上梓。

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幅広いスペシャリストによるバラエティーに富んだ講演となりましたが、参加者の皆さんのメモを取ったり、写真を撮ったりする姿を見ていると多くのヒントや課題に対しての解決をお話の中から学ばれたように感じました。

講師を勤めてくださった皆様、ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。

 


2015-01-19 | Posted in つながる, 活動レポート, 生きる